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執行役員制度Q&A

質問内容

 当社は経営の効率化及び意思決定の迅速化を図るため、執行役員制度の導入を検討しています。この執行役員は会社法上の役員とは異なるようですが、執行役員に支給する報酬や使用人から執行役員になった者への一時金の支給は、税務上どのように取り扱われますか。


回答

■ 執行役員は会社法上の役員ではありませんので、その選任にあたっては株主総会の決議は必要ありません。

■ 執行役員に対する報酬は使用人に対する給料同様、全額損金の額に算入されます。

■ 執行役員になった使用人への一時金の支給は、一定の要件を満たすことにより、税務上退職金として認められます。



解説
1.執行役員制度の導入

 ここ数年、上場企業を中心に、経営と事業執行の分離というコーポレートガバナンスの観点から執行役員制度を導入する企業が増えています。執行役員制度は取締役及び取締役会の改革の一環として、経営の重要な意思決定を行う取締役と事業の執行を専門に行う執行役員とを分離し、取締役会の活性化及び意思決定の迅速化を通して、経営の効率を図ることを目的としています。執行役員制度では、取締役会が経営の意思決定権及び業務執行に関する監督権を有し、代表取締役が業務執行を行い、執行役員が代表取締役を補佐し、一定の代理権を与えられ、その範囲内で業務の執行を行います。

執行役員は会社法で規定されている機関ではありませんので、選任にあたっては株主総会ではなく、通常は取締役会となります。したがって、法律上の根拠がある制度ではないため、会社法上、労働法上、税務上不明な点が多く存在しますが、一般的には①取締役兼務型、②委任契約型、③雇用契約型などにより、会社との契約関係を成立させ、運営されています。

2.執行役員に対する報酬の税務上の取扱い

法人税法上の役員に対する報酬は、過大役員報酬部分や臨時的な給与である役員賞与について損金不算入の制約を受けます。そこで、執行役員が法人税法上の役員に該当するかどうかが問題となりますが、法人税法では、役員の範囲を明確にしており、次に掲げる者を役員として定義しています。

 ① 取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人

 ② 法人の職制上使用人としての地位のみを有する者以外の者で、その会社の経営に従事している者

 まず、①について、これらの者は会社法などの規定により選任される純然たる役員です。執行役員は会社法上の機関ではなく、任意に設置される機関であるため、株主総会で選任される取締役には該当しません。したがって、役員という名称であっても①の役員の範囲には含まれません。

 次に、②について、いわゆる法人税法上のみなし役員ですが、例えば、顧問、相談役などで、その法人における地位、職務等からみて他の役員同様、法人の経営に従事している者などが該当します(法基通9-2-1)。そこで、執行役員がみなし役員に該当するかどうかですが、一般的に執行役員は取締役会における議決権がないと考えられ、また、業務執行の意思決定権を持たず、代表取締役の命令にしたがって業務執行を担当しているに過ぎません。したがって、執行役員は法人の経営に従事しているとはいえませんので、みなし役員には該当せず、報酬については使用人と同様の取扱いとなります。

3.執行役員に就任した場合の一時金の取扱い

 使用人から執行役員に就任した際に支給される一時金については、今回、所得税法基本通達30-2の2<使用人から執行役員への就任に伴い退職手当等として支給される一時金>により、その取扱いが明確にされました。

 使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る。)からいわゆる執行役員に就任した者に対しその就任前の勤続期間に係る退職手当等として一時に支払われる給与(当該給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上、当該給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものに限る。)のうち、次のいずれにも該当する執行役員制度の下で支払われるものは、退職手当等に該当します。

 ① 執行役員との契約は、委任契約又はこれに類するもの(雇用契約又はこれに類するものは含まない。)であり、
  かつ、執行役員退任後の使用人としての再雇用が保障されていないこと

 ② 執行役員に対する報酬、福利厚生、服務規律等は役員に準じたものであり、執行役員は、その任務に反する行為
  又は執行役員に関する規程に反する行為により使用者に生じた損害について賠償する責任を負うこと

使用人から執行役員への就任時に退職手当等として支給される一時金が退職所得に該当するか否かは個々の執行役員制度に応じて判断されますが、上記通達の要件を満たす場合には、①新たな委任契約により法律関係が明確となる、②使用人としての再雇用が保障されていない場合は実質的に使用人を退職したのと同様である、③損害賠償責任について役員に準ずる責任を有するため、地位の変動が認められるなどの理由により、単なる従前の勤務関係の延長ではなく、退職の事実があったものとされます。


こんなアドバイスも

■ 近年、中小企業においても執行役員制度を導入する企業が増えています。ただし、上場企業のような制度化されたものではなく、形式的に採用しているケースも見受けられます。

■ 執行役員制度は特に法律で整備された機関ではありませんので、意思決定の迅速化や業務執行を分離することによる経営の効率化など目的を明確にしないと形骸化する恐れがあります。

■従業員から執行役員に就任した場合の一時金が退職手当となるケースが明確にされましたので、これらを上手く活用し、税務対策を行うことが大切です。



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